16校大会直前特集 第3回 卒業生コラム 村上さんはミッキーマウスだったのかもしれない
- komabaswimming
- 2020年8月17日
- 読了時間: 6分
駒場水泳部に関係する方々による直前特集も3回目となりました!
今回は、駒52(※)のキャプテン、牧野裕幸さんに執筆をいただきました。自分たちの現役時代と今の現役生、そのギャップを面白く伝えてくださっています!ご一読いただき、是非皆様も水泳部の活動や、OBOG会へより大きなご関心をいただければ幸いです!
※管理人の同期のキャプテンですが、ボケボケで第2回の文末で駒56と紹介しておりました。正しくは駒52です!そんなに若くなかったです(笑)失礼いたしました!
「ハハッ」と乾いた笑い声が、プールに響き渡った。昨年、OBとして水泳部の練習に参加させてもらったときのことだーー。
練習前のミーティングで、村上さんは現役生に対して僕を紹介してくれた。「駒52の大先輩で、現役時代はキャプテンを……」と、村上さんは僕についてのかすかな記憶を絞り出しながら一生懸命紹介してくれた。十数年ぶりなのにホントにすごいよ、この人の記憶力。ちなみに、再会時、村上さんの第一声は「昨日、夢に裕幸(僕)が出てきたんだよ」という東野圭吾もびっくりの予知夢についてだった。この人、ホントすごい。
で、僕もいそいそと挨拶したわけ。笑いに対して貪欲な僕は、現役生を爆笑させて羨望の眼差しを一手に浴びようと画策していた。駒場水泳部員に必要なものは泳力じゃねえ、笑わせる力だ! 倍返しだ!(関係ない)、と言わんばかりに。簡単に自己紹介したあと、至極真面目な表情で(こういうときは、笑いながら話すとウケないのだ)、爆笑必至の挨拶を現役生たちにぶち込んでやったのだ。
駒52の名キャプテンの僕「今日は練習に参加させていただきます。見た目は若いですが、言うても37歳のおじさんなので、練習がツラすぎて思わず『失禁』しちゃうかもしれません、そしたらごめんなさい」
30〜40人の大勢の現役生たち「……」
プールに静寂が訪れた。これでもかと言うほどの静けさだった。えっ、プールに防音設備付いてたっけ、と言うほどの無音状態だ。「ししおどし」がその場にあったら、さぞかし美しい音色を響かせたであろう。
そして、ものの数秒あとだったと思う。隣に立っていた村上さんから乾いた「ハハッ」と言う笑い声が聴こえたのは。正直、今となって考えてみると、笑い声ではなかったかもしれない。ただ単に、村上さんが喉に絡んだタンを取るために咳をしただけかもしれない。あるいは、村上さんが急に「ミッキーマウス」のモノマネをしただけなのかもしれない。いや、そもそも「ハハッ」なんて実は聴こえてなかったのかもしれない。だって僕は、ウケなかったショックのあまり、目の前にモヤがかかり、少し意識が飛んでいたから。ヘタしたら、そのときこそ「失禁」していたかもしれない。
……37歳のおじさんが練習ツラくて失禁だよ! 水中かプールサイドでやっちゃうんだよ! クイックターン中やバーベル持ちながらやっちゃうんだよ! 絶対面白いじゃん! あっ何だろ、「失禁」って言葉知らなかったのかな、現役生。あと、もう少し若者言葉使えばよかったかな。「失禁したら、ぴえん超えてぱおん」とか言えばよかったかな。
やれやれ、これは由々しき事態だ。
僕の決死行から「東京都立駒場高校水泳部の現状」を考察するに、1点判明したことがある。OBのギャグに現役生たちは慣れていなかったのだ。よく知らないおじさんが急に「失禁」とか言い始めて怖かったのだ。笑いの観点から言い方を替えてみれば、「場が温まっていなかった」のだ。
本稿を書くにあたって、現役のキャプテン2名にお話を聞く機会をいただいた。LINE通話で30分ほどの短い時間ではあったが、その一部を紹介しよう。
Q「部の雰囲気は?」 A「すごくいいです」
Q「練習内容には満足?」 A「はい」
Q「部員同士のケンカとかある?」 A「なかったです」
Q「練習以外ではどんなゲームして遊んでいるの?」 A「休憩時間などはみんな寝ています」
Q「設備とか物資とかで足りていないものとかある?」 A「特にないです」
Q「総合的に駒場水泳部を評価すると?」 A「いい環境だと思います」
とても真面目である。とにかく真面目である。
ゲームについて質問したのは、僕ら駒52〜54の代では男子部員の中であらゆるゲームが流行っていたから。特に印象に残っているのは、「マルガリータ」だ。男子部員全員それぞれがストップウォッチで目をつむって10秒を計測し、1番近い人が勝ち、1番遠かった人は罰ゲームとして、シャワー室でみずからバリカンを使い、実際に髪を剃り上げて坊主になるというゲーム。今聞くと超危険なゲームだ。今やったら、多方面からお叱りを受けるだろう。でも、僕らは大興奮の中、それで遊んでいた。うん、気が狂っていたんだね。「マルガリータ」ダメ、絶対。
電話取材の最後に「OBOGさんについてどう思う?」とキャプテン2人にたずねてみた。現在は全部で4人のOBOGが協力してくれているそう。マネージャーの仕事をフォローしたり、初心者の部員(今年の1年生18人のうち半分が初心者だとか。駒水らしくてイイ!)に泳ぎ方をアドバイスしたりと活躍しているらしく、キャプテン2人はその4人にすごく感謝していた。
しかし取材後、僕と現役生を電話で繋いでくれた1人のOBがこんな話をこっそりしてくれた。今の現役生たちは、自分で何でも解決しようとする子が多いのだという。水泳や人間関係に悩んでいても、自分で解決しようとするらしい。全員が全員ではないだろうし、自己解決はそれはそれで素晴らしいことだ。でも中には、パンクしてしまう子もいるだろう。
ちなみに、僕が現役生のときは、村上さんのほか、太った人とムダにイケメンの2人のOBコーチを中心に、毎日のように多くのOBOGが遊びに来てくれていた記憶がある。だから何だか毎日とてもにぎやかだった。「三島(みしま)」のたこ焼きなんて、何千個もご馳走になった。そして、OBOGの一部は合宿などにも同伴してくれていたので、彼ら彼女らに悩みを相談した部員も少なくなかったようだ。
最近、「駒場水泳部の現役生たちに対して、僕ができることって何だろう」と考えることが多くなった。僕にとって駒場水泳部の3年間は、いい意味でも悪い意味でも、大事な大事な青春の1ページだ。だから、今の現役生にもできるだけ水泳部を楽しんでもらいたい。そしてたくさん笑ってもらいたい。今、駒場高校水泳部のために活躍しているOBOGには感謝しかないが、僕もできるだけ部活に顔を出しに行こうと思う。もちろん、駒水とはご無沙汰のOBOGの皆々様も遊びに行くようになってくれたらうれしいし、現役生とたくさん交流していただいて、それこそ場を温めておいていただきたい。次こそは、僕の「失禁挨拶」で現役生たちが爆笑するために。
駒52 牧野裕幸
自身の仕事でも忙しい中、素敵なコラムの執筆ありがとうございました!
明日の最終回は、村上先生へのインタビューを掲載させていただきます!






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